民法では、次のような順番で相続人となることが定められています(民法887・889条)。
このため子供がいない場合であっても、配偶者が遺産を自由に処分できるわけではありません。
そのような場合に備えて、配偶者に全てを相続させる旨の遺言を用意しておきましょう。
また子供の場合と同様、親には遺留分があります(民法1028条)。
(※兄弟姉妹には、遺留分はありません)
残念ながら、事実婚や内縁関係にある人には現在、相続人となることはできません。
しかし「相続」ではなく「遺贈」という方式によって、財産を譲り渡すことができます。
この遺贈は、遺言書を作成することで可能となります。
ただし、遺贈は相続と全く同じものではありません。
特に不動産を譲り受けた後の登記手続きにおいて、重要な違いが生じてきますので、注意が必要です。
なお、法的には必要がありませんが、確実な実現のためには遺言執行者を付しておけば良いでしょう。
連れ子は法的には親子関係にないため、相続人となることはできません。
この場合は養子縁組をして法的な親子関係を発生させるか、遺贈という方式によって財産を譲り渡すなどの方法が
あります。
ただし、養子縁組は普通の親子関係と同様の拘束力が生じる上、関係解消したい場合であっても容易にできない
可能性があります。
単に財産を譲り渡したいだけでしたら、遺贈の方式によることをお勧めいたします。
遺贈の場合は、その効果を確実にするために、遺言執行者をつけておくと良いです。
子や配偶者がおらず、親兄弟が亡くなっていても、自分の甥や姪にあたる人が相続人として定められています。
甥姪が亡くなっていた場合には、相続人が存在しないものとして扱われます。
その場合、家庭裁判所が財産を管理する人を選任し、債務などの清算を行います。
その上で、特別な関係にあった人から請求があれば、その人へ財産が譲り渡されます。
そうした人もいない場合は、国庫に寄贈されることになります。
いずれにせよ、そうした手続きには、厖大な時間やコストが必要となります。
ご自身の財産を渡しても良いと思える方がいる場合は、まず遺言などで事前に対策を整えておくべきです。
自分の住んでいる自治体などに寄付したいなどの希望がある場合も、同様です。
現在、そうした手続が採られていないために空き家として放置されている不動産が多く存在し、安全面や防犯面から
社会問題となっています。
そうした問題を引き起こさないためにも、ご自身の死後の財産のことを、よく考えておく必要があります。
遺言書を作成しておくことで、こうした問題は回避できるのです。
遺言がない場合は法律の定めに従って相続分が決定されますが、実際に相続する場合には、どの財産を誰が相続するにかについて、相続人たちで協議する必要があります。
その際に、相続人同士の不仲は、争いの大きな原因となります。
どの財産を誰に相続させるかを、遺言書を作って決めておくことは、そうした争いを避けるためにも重要なのです。
最近は財産の多い少ないに関係なく、こうした争いが起こっています。
死後の認知は遺言でする他ありません。
また、この手続きはスムーズに進めるには、遺言で認知の意思を示すだけでなく、遺言執行者を選んでおく必要があります。
認知手続きが終了しないと相続が円滑に進まない可能性も高いのです。
死後の認知は、事前によく計画を立てておく必要があります。
遺言がない場合、相続をするためには相続人全員が話し合って、どの財産を誰が相続するかを決める必要があります。
しかし相続人となるものが多かったり遠方に散らばっている場合、こうした話し合いを持つことが困難となります。
また、連絡がつかない人がいる場合、そもそも手続き自体が始められないという事態になりかねません。
そうした問題は、遺言書を作成し、誰がどの財産を受け取るかについて決めておくことで回避することができます。
養子縁組をした場合、その相手とは法的に親子関係が生じます。
ですから当然、養親・養子共に、お互いの相続人となることができます。
ただし養子縁組をしたことにより、相続人の数に変更が生じて、相続税の控除額が変更になる場合があります。
また通常の養子縁組をした場合であっても、血縁上の親子関係が消滅するわけではありません。
養子は血縁上の父母の相続人でもあり続けます。
親権や養育権、あるいはその後の親の再婚などの事情は全く関係なく、子どもは血縁上の父母の相続人となります。
これを無視して相続を考えることは、後々に大きな問題を生じることとなります。
当然、遺言がない場合に遺産分割協議を行うときは、その子どもも加わることになります。
揉め事を最小限に抑えるためには、遺言書の作成が欠かせません。
相続人が亡くなっている場合でも、その子などが相続の権利を引き継ぎます。
これを代襲相続と言います。
代襲相続が発生する範囲は、誰が相続人であるかにより、法律で決まっています。
ただし、ある相続人に財産を相続させる内容の遺言書を作成している場合、この代襲相続が発生することで、思いもよらなかった結果となることがあります。
その場合は一度、専門家に遺言書の内容を確認してもらったほうが良いでしょう。
結婚関係にない人の間に生まれた子どもは、法的には非嫡出子として扱われます。
相続においては、結婚した者の間に生まれた子ども(嫡出子)との間で扱いに差がありましたが、法改正によって、
平成25年9月5日以降は、この差が無くなりました。
現在は、結婚の有無を問わず、子どもは同じように相続分を有することとなります。
とはいえ結婚していない場合、認知されていなければ父子関係は生じませんので、注意が必要です。
法律的な観点からは、相続はあくまで被相続人(本人)と相続人との関係です。
しかし実際には、遺産を分ける際に相続人の家族などが干渉してくるケースはよくあります。
そうした干渉には、人情的に理解できるものも少なくありません。
あらかじめ遺言書を作成して、その中でなぜこのような遺産の分け方をするのかについて、きちんと説明しておきましょう。
そのことがトラブルを防ぐ大きな働きをするのです。
お世話になった人や、相続人以外で自分の死後に財産を受け取って欲しい人がいる場合は、生前贈与や遺贈という方式によって、財産を譲り渡すことができます。
遺贈は遺言によって行います。
その方に確実に遺贈が行われるよう、遺言執行者を選んでおきましょう。
生前贈与と違って、遺贈の場合は相続税の対象となります。
相続人でない人への贈与は多くの場合、遺贈の方が納める税額は低くなる傾向にあります。
※具体的な税率については、専門家である税理士との相談の上、検討されることをお勧めします。
民法には、相続人から除外するための手続きは存在します(相続人の廃除 民法892条)。
そしてその手続きは生前だけでなく、遺言によってすることもできます(民法893条)。
ただしそのためには、遺言執行者を選任した上で家庭裁判所での手続きが必要となります。
また、そこまでしても相続人から外すことは、よほどの事情がない限り実現は難しいでしょう。
というのも、相続人廃除は被相続人への虐待・侮辱、または相続人の著しい非行が要件となります。
これらは主観的なものではなく、客観的・社会的に判断して「相続人の資格を奪われても仕方がない程、重大な虐待・侮辱・非行」である必要があります。
判断基準としては、継続的なものであるかどうかや、原因が被相続人の側にも認められるかなど、総合的な事情が考慮されます。
遺言は法律で決められていることのみがその内容となります。
そのため財産の残し方や分け方の理由などは本来、遺言の内容とはなりません。
しかし、遺言の内容にならないことは全く遺言書に記せないのかというと、そうではありません。
自身の心情を遺言書に記しておくことも、当然可能です。
こうした部分を「付言事項」として書き加えておきましょう。
ただし付言事項は本来の遺言の内容ではないため、法的な効力や意味は持ちません。
またあまりに長くなるようでしたら、別に手紙を書くなどの方法にしたほうが良いかもしれません。
このような場合は、相続制度についての情報が足りないか、自分自身の気持ちの整理について十分でないかのどちらかであるケースが多いです。
どちらの場合も、専門家と相談しながら決めていくことで、少しずつ道筋が明らかになっていきます。
「いきなり専門家との相談はハードルが高い」とお考えの方も、安心して相談いただけるように、当事務所では
無料相談会も開催しております。
借金などのマイナスの財産もまた、相続の対象となります。
債権者からの関係でとは、相続人全員が請求の対象となります。
一方で相続人の間では、相続分の割合に応じてそれぞれが負担することになり、自分の負担以上の債務を返還した場合は、その他の相続人に対して負担を超えた範囲について請求することができます。
一般的には相続財産で負債の返還が可能な場合は相続人の一人に対して、負債返還を義務とする代わりに相続分を多く指定するなどの対策をしておけば良いでしょう。
原則として遺言書は、日付が新しいものの内容が有効となります。
ただし、混乱を防ぐために以前に作成した遺言書は破棄しておくことが望ましいでしょう。
公正証書で遺言を作成した場合は、その内容を撤回するためには公正証書でする必要がありますので、注意が必要です。